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ますみ文庫

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最近読んだ本

◯村上春樹・文 大橋歩・画
『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』マガジンハウス(2012)

アンアンの連載エッセーの三冊目。気楽にはははと読んで楽しい。
大橋さんの銅版画の挿し絵がすてき。
この挿し絵があるから買ったようなものです。


◯堀江敏幸
『燃焼のための習作』講談社(2012)

最初に不思議なタイトルでなんだろうと思う。
三人の登場人物たちが、ある日の一室で交わす会話の時間がゆっくりと進んでいく。
とりとめもなく沈黙も挟みながら、停滞していた時間に会話することよって、過去を振り返りつつ未来への希望となる芽が見えてくる。
読み終わってやっぱり不思議な話だったと思うけど、結末は明るい。


◯マーセル・セロー /村上春樹・訳
『極北』 中央公論新社 (2012)

こちらは重いです。原書は2009年に出版されたフィクションですが、いまこの日本で読むと、2011年3.11の事を否応なく想起させます。
創作としてもちろん面白く読み応えがあります。
極北というタイトルから、凍てついた極寒の描写が展開されるのかと思いましたが、どちらかというと極限の状況におかれた人間の精神のあり様に焦点が当てられているようです。これを読むと私たちが生きる意味とは、あとに続く人々にの為によりよい未来を創る事だと確信できます。

村上さんもあとがきで書いているが、私たちは3.11以後、それ以前とは変わってしまった世界に生きている。やはり原発はゼロにしないといけない。
# by masumibunko | 2012-09-05 22:38 |

百年で

百年で_b0212461_1333748.jpg百年で_b0212461_1333719.jpg小倉美惠子
『オオカミの護符』
新潮社 (2011)

ヘンリー・スコット・ホランド 詩 高橋和枝 絵
『さよならのあとで』
夏葉社 (2012)

先日、吉祥寺の新刊の本も置いている古本屋さん、百年で買った二冊の本です。

『オオカミ・・・』は、川崎の昔からの農家に生まれた著者が、家で見つけたオイヌさまのお札を発端に、地元を皮切りに関東近縁のオオカミ信仰を訪ね記録したもので、先に2008年にドキュメンタリー映画が公開されています。

人が生まれた土地でその土地の糧を得て生きる時、糧となる恵みをもたらす神に祈ることは自然なこと。これまで何世代もそうやって暮らしをたててきたことを、著者は取材を通してじょじょに明らかにしていく。そしてそうした土地に根ざした暮らしが、この半世紀あまりで都市化の陰で急速に失われていっていることも。
著者は私たちに土地と切り離して人は生きていけないことを、あたたかい愛着を持って訴えかけています。

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# by masumibunko | 2012-04-21 13:53 |

ある一日

ある一日_b0212461_1311578.jpg
いしいしんじ
『ある一日』
新潮社 (2012)






出産小説と言っていいのか、著者本人と奥さん、生まれてくる赤子をモデルにしたと思われる、出産のその一日をめぐる物語です。
夫婦は、以前に赤子を死産でなくしていて、その時悲しい思いをした分、この新しい命の誕生を慈しんで迎えようとする姿が、温かな羊水のイメージゆたかに描かれています。
いのちは水と切り離せないもの。当たり前といえばあたりまえだけど。水は命を流しもするし、包みもする。それも大きな水の世界では同じことなのかもしれない。

でも著者の以前の作品『みずうみ』や最近のエッセイ『遠い足の話』で、前の子どものことと思われる描写を読んでいたので、ほんとよかったなあとおもいます。

出産の時ってこんなんだったろうか、もう忘れてしまっているけど、こうやって物語になるんだなあ。小説家ってすごいなあ。
# by masumibunko | 2012-04-20 13:01 |

Yonda?CLUB が残念。

新潮文庫のヨンダクラブ ↓
http://www.shinchosha.co.jp/bunko/yondaclub/
がリニューアルして残念なことになってる。
5冊でもらえるものがなくなってるし。
いらないよ〜てものもあり。
# by masumibunko | 2012-03-06 10:42 |

小澤征爾さんと、音楽について 話をする

小澤征爾 ・ 村上春樹
『小澤征爾さんと、音楽について話をする』新潮社 (2011)

タイトル通り、村上さんが音楽について小澤さんにインタビューしたものをまとめたものです。

面白く最後まで読んでしまいました。
クラシック音楽はきまぐれにCDで聴くぐらいで知らないことばかりだけど。
村上さんの文章だとついつい読んでしまうんですねえ。

要は音楽というのは、
「・・・デューク・エリントンが言っているように、世の中には「素敵な音楽」と「それほど素敵じゃない音楽」という二種類の音楽しかないのであって、ジャズであろうがクラシック音楽であろうが、そこのところは原理的にはまったく同じことだ。「素敵な音楽」を聴くことによって与えられる純粋な喜びは、ジャンルを超えたところに存在している」( 始めに より)

とういことであり、 また、

「僕がこのセミナーに参加するにあたっていちばん興味を持ったのは、どのようにして「良き音楽」が作られていくかというプロセスだった。僕らは良い音楽を聴いて感動したり、あまり良くない音楽を聴いてがっかりしたりする。そういうことをごく自然におこなっている。しかし実を言うと、どのようにして「良き音楽」が作られていくかというプロセスについては、あまり多くを知らない。」
("スイスの小さな町で"の章より。小沢さんがスイスの小さな町で主催している、若手の演奏家のためのセミナーに村上さんが特別ゲストとして招かれ、その様子を記録している。)

というように、小澤さんへのインタビューを通して、そんな良き音楽が作られて行くプロセスがいろんな角度から明らかにされていくという具合です。
# by masumibunko | 2012-03-02 10:08 |